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ICPEN詐欺防止月間(2023年)

はじめに

毎年、消費者月間に合わせて行っている「詐欺防止月間(Fraud Prevention Month)」の今年のテーマは、「ダークパターン(dark patterns)」です。
OECDの報告書では、ダークパターンは、通常オンライン・ユーザー・インターフェースに見られ、消費者を誘導し、欺き、強要し、又は操って、多くの場合消費者の最善の利益とはならない選択を行わせるもので、消費者に多大な被害を生じさせる可能性があるという懸念が高まりつつあるとされています。
消費者庁は、国境を越えた不正な取引行為を防止するための取組を促進する国際ネットワークであるICPEN(※)に参画しています。その取組の一つである「詐欺防止月間(Fraud Prevention Month)」では、加盟国それぞれがテーマに沿った注意喚起などを実施しています。消費者の皆様におかれましては、このキャンペーンを、詐欺被害の未然防止に役立ててください。

  • (※)ICPEN(アイスペン:International Consumer Protection and Enforcement Network(消費者保護及び執行のための国際ネットワーク))は、国境を越えた不正な取引行為を防止するため1992年に発足したネットワークで、約70か国の消費者保護関係機関が参加。

ダークパターンとは

ダークパターンは、一般的に、消費者が気付かない間に不利な判断・意思決定をしてしまうよう誘導する仕組みのウェブデザインなどを指すとされています。
ダークパターンの行為類型は多岐にわたると考えられるところ、例えば、「残り○分」などと、あたかもその後の短期間のみに適用されるお得な取引条件であるかのように表示しているが、実際には当該期間経過後も同じ条件が適用されるもの、サブスクリプションの登録後、解約方法を一般消費者に対して不明瞭とすることで購入者の契約の解除権の行使を困難とするものなどは、ダークパターンに該当すると指摘されています。
OECDの報告書では、ダークパターンは概して、消費者に望ましい範囲を超えて金銭を支出させ、個人情報を開示させ、又は注意時間を費やさせることを目的とするとされています。ダークパターンの明確な定義はなかったところ、OECDにおいて以下のとおり実用的な定義が提案されています。

ダーク・パターンとは、消費者の自主性、意思決定又は選択を覆す又は損なうデジタル選択アーキテクチャの要素を、特にオンライン・ユーザー・インターフェースにおいて、利用するビジネス・プラクティスのことである。これらは、しばしば消費者を欺き、強制し、又は操作し、様々な方法で直接的又は間接的に消費者被害を引き起こす可能性があるが、多くの場合、そうした被害を計測することは困難又は不可能であろう。


図1 啓発画像(消費者庁仮訳)

ダークパターンの分類

OECDの報告書では、多くのダークパターンは、消費者の認知バイアス、行動バイアス、ヒューリスティックス(経験則等)を悪用することにより消費者に影響を与え、一般的に以下の区分に分類されるとされています。

  • 【強制】 特定の機能にアクセスするために、消費者にユーザー登録や個人情報の開示を強要するなどの強制的な行為。
  • 【インターフェース干渉】 デフォルトで事業者に有利な選択肢を事前に選択する、視覚的に目立たせるなど。
  • 【執拗な繰り返し(ナギング)】 通知や位置情報の取得など、事業者に都合の良い設定に変えるように何度も要求する。
  • 【妨害】 解約や、プライバシーに配慮した設定に戻すことなどへの妨害行為。
  • 【こっそり(スニーキング)】 取引の最終段階で金額を追加する、試用期間後に自動的に定期購入に移行するなど。
  • 【社会的証明】 虚偽の推奨表現、過去の購買実績を最近の実績のように通知するなど。
  • 【緊急性】 カウントダウンタイマー、在庫僅少の表示など。

事例

1.詐欺的な定期購入商法

図2 啓発画像(消費者庁仮訳)

消費生活相談事例

スマートフォンでオンラインゲームをしていたら、シミが消える効果がある高額な美白クリームが「初回550円」で購入できるという広告が表示されたため、公式販売サイトで注文した。美白クリームが届いたが、数日後に、同じ販売業者から同じ美白クリームが届いたので、何かの間違いだと思って開封せず注文完了メールを確認したところ、販売業者の注文完了メールには、初回注文日から1週間後に2回目として3個(約3万9000円)発送すること、3回目以降は3か月ごとに3個が届き続ける定期購入契約であることが記載されていた。申込みの際に、販売業者の公式販売サイトに定期購入契約との表示は確認できなかった。

確認すべきポイント

不要なトラブルを避けるために、ネット通販で申し込む際は、最終確認画面で商品の内容や取引条件・解約条件などを慎重に確認しましょう。さらに、もしものトラブルに備え、ECサイトの申込みの最終確認画面のスクリーンショットを撮り、表示されていた契約条件を証拠として残しましょう。ウェブサイトの場合、注文後に条件などが変更され、契約した当時の条件が確認できなくなるおそれがあります。
ネット通販は、訪問販売や電話勧誘販売のような不意打ち的な勧誘によって契約するものではないため、無条件で契約を解除できる「クーリング・オフ」制度がありません。事業者によっては、いったん契約すると簡単に解約できない場合もありますので、申込みの段階で契約内容や解約方法などが確認できなかったり、納得できない点があったりする場合は、契約の申込みを見合わせましょう。
令和3年の特定商取引法改正により新設された通信販売に関する規定が令和4年6月1日から施行されたため、最終確認画面に不実の表示や誤認させるような表示があったりした場合、誤認して申込みをした消費者は、契約を取り消せる可能性があります。

2.動画配信・音楽配信といったサブスクリプションでの注意点

近年、定められた料金を定期的に支払い、一定期間、商品やサービスを利用することができる「サブスクリプション(サブスク)」を利用する人が増えています。動画配信や音楽配信、レンタル、学習教材、専門家相談、外食など、様々なサービスのサブスクが登場しています。多くの場合、無料期間内に解約をしなければ、自動的に有料サービスに移行し、契約の継続中は利用しなくても料金は発生します。また、解約しない限り、契約が自動更新されるケースも多いです。
多くのサブスクでみられるように、インターネット上で申込みをするサービスについても特定商取引法が適用されます。特に、令和3年の特定商取引法改正により、令和4年6月1日からは、サブスクの申込みをする最終確認画面においても、取引における基本的な事項として、例えば、無料期間終了後に有料サービスに移行する時期やその場合に支払う料金などの契約内容、解約方法などを明確に表示することが義務付けられました。サブスクを申し込む際には、最終確認画面で、サービス内容や解約方法などをしっかり確認しましょう。

終わりに

ダークパターンはオンライン上で見られることが多いです。消費者の皆様も、インターネット通販で商品やサービスを購入したり、申し込む際には、最終確認画面で商品やサービスの内容や取引条件・解約条件などを慎重に確認しましょう。
インターネット通販で「困ったな」と思ったら消費者ホットライン(188番)までお電話ください。


ちょっと待って!!そのネット注文"定期購入"ですよ!

出典

担当:参事官(調査研究・国際担当)